親記事 引用 |
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【短編こっきり随筆】僕がドラクエをやめようと思った理由---その1---
3月はやはり忙しい。毎日のように仕事に追われ帰宅はいつも22時とかそこらへん。 昨日も近日に怒涛の如くに襲ってくる入札案件に備え残業、 会社のセキュリティにフタをした頃には21時半を回っていた。 一応妻にLINEで今から帰るよコールをするが既読にもならず。 ああ、もう家事と育児に疲れて寝ちゃったのかな、と思い追って電話はしなかった。 夕飯がまだだったのでよくある大手チェーンの定食屋に入り 特段食べたくもなかったカレーを頼んだ。 ひりつく口元を中和しようと思ったが 何を考えたかバイトくん!底抜けにあったか〜〜いお茶を持ってくるのヤメテーー!! 口元の辛さよりもふっと沸いた苛立ちの方を抑えるのにやっきになった私は、 その使えないバイトに頭の中で捨て台詞を吐いていた! 「武道家80 攻370転びあり 30戦負けなし!」 ああ、今日はとことんついてないや…そう思い店をあとにした
ようやく帰宅したときには時計は既に22時を回っていた。 多分家族は寝ていると思っていたので玄関のドアをそぅーーっと開けた。 風邪気味だった妻は娘と寄り添うように寝ていた。 枕元にはPETボトルのポカリと体温計が置かれていた。 ここでようやく私は自分の愚かさに気づかされた。 そう、大変なのは自分だけではなかったのだ。 毎日のように帰宅の遅い夫。 その間、家庭をしっかり守って子供の面倒を見てくれている人がいたんだ。 風邪で体調不良なのに文句のひとつも言わずに…帰りを待ってくれていた妻がいたんだ。
メルサンディのボスが弱体化したことに懸念を覚えつつ たかだか68000Gの郵便バグのことしか考えていなかった自分は恥ずかしくなった。 今日はさすがに風呂に入って布団にもぐり込むとしよう。それがいい さっとシャワーだけ浴びてコンタクトを外してから歯を磨いた私は 二人を起こさないようにそぅ〜〜っと寝室のドアを開けた。 妻と娘のほっぺに軽くキスをしてこう囁いた。 「ハッピーホワイトデー!」 はっ!とした。 メリルが私を待っている!!行かなきゃ!! 寝室のドアをそっと閉め、私はドラクエ部屋に忍び足で向かった。 手には妻が飲みかけのポカリを握りしめ…
つづく
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